リビング+:ニュース 2003/10/29 23:59:00 更新


無線P2Pで、いかにネットワークを構築すべきか (2/2)


両者を合わせた「Hybrid型」

 スカイリー・ネットワークスでは、いずれの方式を採用しているのだろうか? 梅田氏は、同社の無線アドホックプロトコル「DECENTRA」(*)は、両者を合わせた「Hybrid型」であると話す。

 「2つを組み合わせていれば、Hybrid型に分類される。どう組み合わすかによっても、いろいろある」。Hybrid型としてはほかに、P2PコミュニティJnutellaによって提唱された、JPPPなどが挙げられる。

 *DECENTRAは、無線アドホックネットワーク向けのプロトコルスタックであり、ミドルウェア。さまざまな無線端末に搭載されることを想定する。ここで説明する経路制御以外にも、データ送受信、暗号化など多くのAPIを提供している

 それでは、DECENTRAの概要を見てみよう。DECENTRAは、隣同士でリンク状態を確認するため、「基本はProactive型」であるといえる。各ノードは、自分と1ホップで隣接するノードを確認して、隣同士で情報交換している。

 2ホップ以上先のノードは、どう把握するのか。ここで登場するのが、「スコープ」という概念だ。スコープとは、“自分から何ホップ先にあるか”を基準とする、ネットワーク規模を表す単位。たとえば、“スコープ3”なら、3ホップ先までのノードを含むネットワークを指す。DECENTRAでは、スコープごとに差をつけて、設定を行うことになる。

 具体的には、「スコープ2では1秒おきに情報を更新し、スコープ5では5秒おきに更新する」といった具合だ。これにより、「自分に近いほどよく見え、周辺にいくほど確率的に誤った情報が増える」(梅田氏)かたちで、ネットワークの概要を把握する。

Photo

各ノードはネットワークの全体像を、スコープにより何段階かに区切って把握する。一定のホップ数を越えた先のネットワークは、無視される

 このようにして予め経路表を作成するが、相手ピアがスコープ外にある場合は、フラッディングをかける。その上で、相手先ピアからの返信をもとに、経路発見を行う。すなわち、Reactive型の通信も行う。

 梅田氏は「ネットワークが固定的で、スタティックだった場合は、スコープを大きくとればいい」と話す。その場合は、フラッディングのリスクがなくなる。ネットワークに応じて、最適化できるのだとした。


 以上、さまざまな経路制御方式を見てきたが、無線アドホックネットワークでは「いまだ『決定的』とされる方式は登場していない」(梅田氏)。業界として、手探りが続いている状態のようだ。

 梅田氏は経路制御以外にも、考えていかなければならない問題は多いと指摘する。たとえば、アドレス配布や、名前解決をどうするかなど。いずれにせよ、優れた無線アドホックネットワークの構築に向けた取り組みは、まだ始まったところ。今後どのように進んでいくのか、注視していきたい。

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関連リンク
▼スカイリー・ネットワークス
▼新社会システム総合研究所

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[杉浦正武,ITmedia]



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