“走る”楽しさ――GMの魅力を探る:特集 大人が愛するアメ車の世界 GM編(3/3 ページ)
「大人が愛するアメ車の世界」、最初の試乗リポートはGMブランドの高級ライン、キャデラックのエントリーモデル「CTS」。
キャデラックと言えばほとんどの人が「デカイ、ふわふわした乗り心地、悪い燃費の金持ちカー」というイメージを持っているのではないだろうか。だが、今回紹介するキャデラックCTSはそんなネガティブイメージを軽く一蹴し、「今のアメ車はこうなのか!」と目を覚ましてくれる会心作。
道行く人のみならず、対向車線からの視線を熱く感じる縦型ヘッドライトと2段グリルがおりなすレトロフューチャーなボディデザイン、アメリカンなおもてなしを実現したインテリア装備の数々、キャデラックの名に恥じない快適なドライビングフィール……CTSは21世紀のキャデラックがコンセプトとして掲げる「アート アンド サイエンス(デザインとテクノロジーの融合)」を体現した一台といえるだろう。
現在販売されているモデルは2.8リッター(車両価格495万円)と3.6リッター(同620万円)の2モデル。試乗したのはゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン マーケティング本部長山守氏が「初めてGM車に触れる方にはまずこれを」とオススメしてくれた「キャデラックCTS 2.8」。生まれ変わったアメリカンラグジュアリーカーの真価に迫る。
まず、シートに座って驚いたのが、内装の質感。「これ、本当にアメ車なの?」と印象を新たにさせられる。本革張りのシートにはヒーターとベンチレーション(蒸れ対策の換気)機能が付属、垂直にポップアップするHDDナビゲーション、ウッドパネルの間からは緩やかな間接照明が車内のシェイプをほんのりと描き出す。ナビシステムやエアコン周りなど、運転席・センターコンソールにちりばめられたボタン類はやや煩雑な印象を覚えた。パッシブエントリー方式を採用したキーは操作なしでドア・トランクのオープンができるほか、エンジンもキーレスで始動できる。乗車前にあらかじめ室内温度を設定できるのもうれしい。
気になる乗り味は「クジラのような」ゆったりとしたイメージ。街乗りでは、非常に滑らかでおとなしい印象を受けた。高速道路に出て、時速80〜90キロ程度で走ると、街乗りのラグジーな感覚から、ややスポーティーなイメージへと変貌を遂げる。アメ車の柔らかな足回りを残しつつ直進安定性をしっかり保持しているので、アクセルを無理に踏み込まず、自分のペースで走る「大人のドライブスタイル」に最適。現時点では左ハンドル仕様のみなのが若干ネックとなるが、誰かに運転してもらうのではなく、自分で運転を楽しむプレミアムスポーティーとして、そして初めてのアメ車としてCTSをチョイスするのも決して悪くはないはずだ。
なお、前出の山守氏は「3.6リッターモデルは装備品は同じですが、足回りをかなりかっちりとさせていて、ヨーロピアンプレミアムからの乗り換えをされる方も多いです」とのこと。硬めの乗り味をご希望の方はそちらを試してみるのもいいだろう。
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左上 |
2.6リッターエンジンのアメ車と聞くとパワー不足のイメージを受けるが街乗りではこれで充分 |
右上 |
トランクルームの容量は、車体サイズに比べて大きく、後部座席を前方に倒せば長いものも収納できる |
左下 |
落ち着きのある内装はほのかな明かりに照らし出され車内を独特のムードで包んでくれる |
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高級志向のラグジュアリーカー、キャデラック。かつては若者の憧れであったが、その価格や独特の乗り味で、いまや「オッサンのクルマ」とレッテルを貼られてしまっている感もある。しかし、CTSはすでに、500万円以下のプレミアムセダンとして十二分に他国のモデルと競えるレベルまで到達している。「誰かと同じヨーロピアンプレミアムではイヤだ」、「でも国産じゃちょっと自分のイメージと合わない……」という人にジャストフィットする一台といえるだろう。ガソリンが青天井の高騰を見せる現在、レギュラー仕様であることも見逃せない。
参考までに、今秋、スーパーチャージャー付き6.2リッターのV8エンジンを搭載したハイパフォーマンスモデルのCTS-Vが日本に上陸するという。ラインアップを充実していくCTSから、しばらく目が離せなさそうだ。
「大人が愛するアメ車の世界」、次回はあのメーカーの魅力に迫ります。
取材・文/松井 悠
協力/ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン
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