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欧州のテレビ/プロジェクター事情劇場がある暮らし――Theater Style【CeBIT特別編】(3/3 ページ)

» 2005年03月12日 23時59分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 一方、懸念材料としては、品質指向の高い日本や大画面指向が強い米国よりも、欧州は“ユーザーが感じるHDTVのメリット”が低いのでは? という意見もある。欧州の一般家庭はサイズの大きいテレビがあまり使われておらず、今後、薄型テレビ化で大画面指向が強まったとしても、画面サイズへのニーズは日本と同じか、もしくはそれよりも小さいと見られている。

 加えて欧州はアナログ地上波の解像度が日米よりも高く(日米が採用するNTSCは走査線本数525本、欧州の多くで採用されているPALは625本)、プログレッシブ処理さえ優秀であればHD品質とは言わないまでも、かなり高い精細感を得ることが可能だ。このため、40インチを下回る画面サイズでは、さほどHDTVのメリットが感じられないかもしれない。

 多数の国が集まる集合体で、普及シナリオや同じ商品でも国によって捉えられ方が異なることもあり、そうカンタンにシナリオが進行するかどうかは不透明な面もある。

意外に根強いホームシアター市場

 それでも、ホームシアター市場自体は、以前に比べて拡がってきていると話すベンダーが多い。日本と同様にリアプロジェクションテレビを中心にしたシステムよりも、フロントプロジェクターが好まれる傾向が強い。

 ただしプロジェクターだけを買って帰って設置する使い方よりも、専門店が顧客向けのソリューションとして設置計画を含めた提案をするための商材という意味合いが強いようだ。欧州はオーディオ製品の人気が高く、ちょっとしたお金持ちならばカスタムインストールで家屋に組み込むタイプのオーディオ機器を設置することも多い。その流れがホームシアター市場でも続いている。

 欧州の中でも特に寒く冬の長い国や地域では、DVDによって手軽に映画を楽しめるようになった背景もあり、長い夜を家庭内で過ごすための娯楽として、今後さらなる成長を見込む声もある。

 ただプロジェクターの低価格化とともに、もっとカジュアルな使われ方も増加してはいる。CeBITはAV機器の専門トレードショウではないため、あまりマニアックな製品は置かれていないが、それでも低価格の家庭向け小型プロジェクターには人気が集まってきているという。このあたりは日本の事情と似ている。

 日本でもお馴染みの三洋電機LP-Z3や松下電器TH-AE700、日立TX100などが各社ブースの比較的良い場所に置かれていた他、NECが業務用からホームまで幅広いラインナップを揃えて大々的なプレゼンを行っていたのが印象的だ。

photo 幅広いラインアップを紹介するNEC

 日本でも発売されている家庭向けDLPプロジェクターHT1100のほか、1024×576ピクセルの16:9 DLPパネルを採用したコンパクトなHT510が家庭向けとして置かれていた。HT510は日本では発表されていないが、レンズシフト機能が付き騒音レベルは26dBと、DLPプロジェクターとしてはかなり使いやすいスペックだった。

 面白い番組が少なく、スポーツ放送への依存度が高いという欧州の放送事情。しかし比較的低いと言われるDVDの普及とともに、今後、これらカジュアルスタイルのプロジェクターがさらなる低価格化・高性能化を果たすことで、欧州の長い冬にも変化が訪れるのかもしれない。

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