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スタンダードなシアターシステム構成を無線化――デノン「DHT-S7000」サラウンドシステム特集(3/3 ページ)

» 2005年12月28日 19時41分 公開
[浅井研二,ITmedia]
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 通常の利用では、「入力切替」で再生機器を選択し、「サラウンド」ボタンでサラウンドモードを切り替えるという操作が基本。リモコンには、「入力切替」のほかに「インプット」というボタンもあり、少々困惑してしまうが、これは音声信号の種類を切り替えるためのもの。デフォルトは「AUTO」になっており、PCM/ドルビーデジタル/AACのいずれが入力されても自動的にデコードを行う。また、DVDとTV/AUX1に関しては、デジタル入力がなければ、自動的にアナログ側を利用する。

 ほかに「PCM」「DTS」「ANALOG」というモードもあり、「PCM」「DTS」では該当信号の入力時のみ再生を実行。「ANALOG」では、デジタル入力が存在してもアナログ側を優先する。通常は「AUTO」にしておけばいいが、CD再生時に頭の音が切れたり、DTS信号で入力開始時にノイズが出る場合もある。ほかの製品でも信号選択をオートにしていると発生しがちな問題ではあるが、気になるなら「PCM」「DTS」を手動選択しておくしかない。

 サラウンドモードは、ボタンを押すたびに、AUTO DECODE→5CH STEREO→MONO MOVIE→ROCK ARENA→JAZZ CLUB→VIDEO GAME→MATRIX→DOLBY VS→STEREO→DIRECTと切り替わる。

 オートデコードでは、5.1chデジタル音声はそのままマルチチャンネルで出力され、2ch音声は別に用意された「サラウンドパラメーター設定」で選択する。デフォルトでは「AUTO ST」なので、ステレオ2ch(スーパーウーファーも使用)出力となるが、ほかにドルビープロロジックII(シネマ/ミュージック/ゲーム)デコードにも対応。

 このオートデコード、そして、DOLBY VS(バーチャルスピーカー)は、リモコンに専用ボタンが用意されているため、ダイレクト呼び出しも可能だ。また、ヘッドフォン端子にプラグを差し込んだ場合は、自動的にドルビーヘッドフォンモードへ移行する。

 音場再現をDSP処理で行う各モードは、5CH STEREOではリアからもフロント同一の音が出力され、センターへもL/Rをミックス。また、MONO MOVIEはモノラル音声の映画に適したサラウンド効果を付加、ROCK ARENA、JAZZ CLUBはコンサート会場やライブハウスの音響を再現したものだ。VIDEO GAMEはメリハリを、MATRIXは広がりを強調する処理となる。

 STEREOは、すべての音声を2chにダウンミックスするもので、DIRECTも同様だが、さらにボリューム以外の処理もバイパスされる。こうしたダイレクト出力が用意されている場合、個人的には好んで使うほうなのだが、実際にDIRECTモードで音楽再生を試してみると、この製品では若干ものたりなさを感じてしまう。音質は満足できるレベルなのだが、密度や広がりに欠ける印象だ。

 次に、STEREOモードへ切り替えてみた。この場合、SDB(スーパーダイナミックバス)による低音強調も利用可能なので、とりあえずオンにしてみる。すると、全体に密度が補完された印象は受けるものの、今度は低音の存在感が妙に気になってしまう。SDBとは別に、5種類(ロック、ポップス、ボーカル、ジャズ、クラシック)のプリセットイコライザーも選択できるため、少なくとも音楽再生に関しては、そちらを使うべきかもしれない。あるいは、5.1CH STEREOモードでも音の広がりや密度が補われるので、そちらを使う手もある。

 映画の5.1ch再生でも基本的な音の印象は同じだが、音楽再生時ほどには音の密度や広がりにものたりなさを感じることはなく、また、特にSDBを利用しなくても、十分なレベルの低音が確保できると感じた。

 ワイヤレスサラウンドシステムというと、どちらかというとギミック的な扱われ方をされがちで、実際、製品も変則的なデザインやシステムのものが多い。しかし、デノンの「DHT-S7000」は、あくまでもスタンダードなスピーカー構成のままで、単に配線のみを無線に置き換えた、いわば正統派の製品といえるだろう。

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