そのサウンドは、価格の割にはかなり健闘している。とくに高音の素性の良さが光っており、音楽を聴くとハイハットやシンバル、金管楽器などがとてもリアルに感じる。映画に関しても「ダイハード4.0」の銃撃シーンなどで、痛いくらいに鋭い銃撃シーンを楽しむことができた。
一方で低域に関しては、あいまいさが多少感じられる。ボリューム的に弱いというわけではないのだが、フォーカス感や解像度が甘く、全体的にぼんやりした印象。鋭い高音との組み合わせとしては悪くないが、個人的には中低域にもう少し芯がほしい気がする。とはいえ、価格を考えれば充分以上のデキだろう。従来、この価格帯の製品は、音に関しては語ることのできない機能優先モデルが多かったが、少なくともKRF-V9300H-Sに関しては、そういった既存の製品とは一線を画す。コストパフォーマンスは十分以上といえそうだ。
サラウンド感に関しては、自動音場調整機能の効果もあってなかなか優秀。前後左右ともに、素直な音の移動を実感できる。厳密に見ると定位にツメの甘さも感じられるが、そのあたりは手動でじっくり調整すれば、納得できるレベルに達することができるだろう。
特筆したいのは、ピュアオーディオモードの良さだ。ダイナミックレンジが顕著に良くなるため、音の細やかさが格段に向上、よりコンテンツに埋没できるようになる。
価格から見ても、ホームシアター初心者や予算が限られている人などにはお勧めできる製品。とくにデザインなどの付加価値よりも、実直に質実剛健さを求めたい人には、魅力的な1台となるはずだ。旧モデルの継続販売はあるものの、ケンウッドのラインアップするAVアンプでは唯一無二の存在ともいえる製品。そのためか、低価格モデルとは思えないクオリティーを発揮してくれる。価格帯で選ぶというよりは、むしろ実際の音を聴いて判断してほしい。
型番 | KRF-V9300H-S |
---|---|
メーカー | ケンウッド |
HDMI入力 | 2 |
HDMI出力 | 1 |
デジタル入力 | (光2/同軸1) |
アナログ音声入力 | 7 |
PHONO端子 | × |
iPod端子 | ○(ケーブル別売) |
別売iPodドック | × |
USB端子 | × |
i.LINK端子 | × |
LAN端子 | × |
自動音場調整機能 | ○ |
アンプ | 定格100ワット×7 |
サイズ | 440(幅)×394(奥行き)×166(高さ)ミリ |
重量 | 11キログラム |
今回のAVアンプテストには、わが家の自称「極小シアタールーム」を使用。スピーカーは、昨年に引き続きエラックで統一した。ただしモデルチェンジが行われたため、200ラインシリーズから240ラインシリーズに変更している。プレーヤーは、パイオニア「BDP-LX91」、パナソニック「DMR-BW800」など。BDP-LX91は、マルチチャンネルPCM/ドルビーTrueHD/DTS HD MAなど全てのHDオーディオ規格のビットストリーム出力に対応したBDプレーヤーの高級モデル。映像、音声を別のHDMIケーブルに出力してクオリティーを高める機能を持つため、今回のAVアンプ特集ではそれを活用し、各製品の実力を最大限発揮させることを試みた。ケーブル類にはオーディオテクニカの「アートリンク」シリーズを活用。ケーブルによるロスや変調を最低限に抑えた。
機材 | メーカー/型番 | 価格 |
---|---|---|
フロントスピーカー | エラック「FS247」 | 29万4000円(ペア) |
センタースピーカー | エラック「CC241」 | 13万6500円 |
リアサラウンドスピーカー | エラック「BS243」 | 17万8500円(ペア) |
サラウンドバックスピーカー | エラック「BS243」 | 17万8500円(ペア) |
サブウーファー | エラック「SUB2060ESP」 | 29万4000円 |
BDプレーヤー | パイオニア「BDP-LX91」 | 43万円 |
HDMIケーブル | オーディオテクニカ「AT-EDH1000」1.3メートル | 2万3625円 |
スピーカーケーブル | オーディオテクニカ「AT-SS2300」1メートル | 2625円 |
電源タップ | オーディオテクニカ「AT-PT707」 | オープン価格 |
プロジェクター | ビクター「DLA-HD1」 | 29万4000円 |
スクリーン | キクチホワイトマッドアドバンス(100インチワイド) | 旧モデルのため価格不明 |
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