ドコモが無線LANに乗り出す理由ドコモが無線LANを使ったホットスポットサービスを展開する。一見,不可解に見えるこのサービスの裏には,将来的なビジョンを実現するためのテストという意味合いがあるのではないだろうか。
NTTドコモが,いわゆる無線LANのホットスポットサービス(用語)を行うことを発表した(3月15日の記事参照)。「FOMAとのシームレスな連携を目指して,モニターサービス終了後は速やかに商用サービスを提供したい」とドコモは説明する。 それにしても,「なぜドコモが?」と思う人は多いのではないだろうか。一見したところ,今回のサービスは一般のホットスポットサービスとなんら変わるところがないからだ。
“シームレスな連携”とは何か?疑問の1つは,将来の「FOMAと無線LANのシームレスな連携」という部分だ。ドコモでは「端末についても契約についてもシームレス」と言うに留め,具体的な内容を一切明らかにしなかった。 もちろん,推測することはできる。数日前,「ドコモがFOMAと無線LANのカード型デュアルモード端末を開発中」という報道が一部で流れたが,両方の機能を使える端末の提供というのも可能性の1つ。そうなれば,FOMA契約者が同時に無線LANも利用できると考えるのが自然だ。 おそらく同社にとって無線LANは,FOMAを補完するものであり,ポイント,ポイントに打っていくものだ。MISのように無線LANで面をカバーしていこうと考えているとは思えない。 ここでヒントになるのは,FOMAにとって屋内での利用がウィークポイントになっているということだ。FOMAはこれまでのPDCに比べて2GHz帯という高い周波数を使う。さらにFOMA向けの小型基地局もまだ完成していない。このため屋内での利用には制限が多いからだ。
ドコモ資料より。FOMAのサービスエリアが建物内まで広がるのは2003年2月以降,というスケジュールだ 同社に屋内に強い無線LANと屋外に強いFOMAを組み合わせる──という発想があることは,主要ホテルや展示会場などを無線LANのエリアとしていることからもうかがえる。
FOMAのIP化と関係は?もう1つ分からないのは,無線LANとFOMAのバックボーンネットワークについてだ。同社の説明では,無線LANのアクセスポイントは専用線などでドコモのモニターサービスセンタのルータに接続される。しかし,そこから先はインターネットにつながっているとあるだけで,FOMAのネットワークと関係があるのかは不明だ。
この点についてドコモは「バックボーンネットワークの具体的な仕組みやISPサービスについては,既存のものを使うのか新たに構築したものなのかも含め答えられない」としている。 本当にシームレスな連携を目指すなら,無線LANのエリア内にいるときは無線LANでインターネットに接続され,エリア外に出るとそのままFOMAネットワークで接続されるべきだろう。つまりユーザーが気づかないぐらい自然にネットワークが切り変わり,接続が保持される必要がある。Mobile IPなどの技術がここで使われるはず。 ドコモは今回の無線LAN実験の目的として「商用サービスのための技術的な課題を検証する」ことを挙げている。しかし同社全体の戦略を考えれば,単なるホットスポットサービスよりも,こうしたFOMAとの連携をどうするかのほうが重要な技術的課題のはずだ。 実際,ドコモは折に触れて,将来的にネットワークをIP化することを話している(2001年7月の記事参照)。しかも第4世代を待たずしてだ。 現在はATMをバックボーンとして使っているFOMAだが,近い将来なんらかの形でIP技術を織り込んでくることは間違いない。既に研究が始まっている第4世代携帯電話では,FOMAや無線LANのネットワークをシームレスに活用できる方式が考えられているからだ。
バックボーン部分については一切答えられないという同社の対応に,この部分で何らかの実験が行われる可能性を感じたのは気のせいだろうか。
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