遅れてやってきた位置情報サービス“iエリア”

ドコモがiモードコンテンツの1つとして開始した位置情報サービス「iエリア」は,どのくらいの力を持つものなのだろうか。iモードの企画責任者,夏野氏の講演より。

【国内記事】 2001年7月24日更新

 日立製作所のプライベートシヨウ「HITACHI ITコンベンション2001」2日目の24日,特別講演としてNTTドコモiモード事業本部iモード企画部長の夏野剛氏が登壇し,「iモードストラテジーと今後の展望」と題した講演を行った。

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自分の緯度,経度を知りたい人はいない?

 夏野氏は,ドコモが7月2日から開始した位置情報サービス「iエリア」に触れ(6月28日の記事参照),「(iエリアは)世界最大の位置情報サービスだ」と語った。

 データ通信速度が大幅に増加する第3世代携帯電話を控えた今,多くの調査で“期待するアプリケーションは位置情報サービス”という結果が出ている(5月28日5月29日の記事参照。既にPHSキャリアやJ-フォン,KDDIなどは,基地局から得られる位置情報を利用したコンテンツを提供済みだ(7月10日の記事参照)。

 さらにKDDIは,この秋から「gpsOne」(用語)と呼ばれるGPS衛星を使った精度の高い位置情報を利用して,サービスを提供する予定でいる(4月4日の記事参照)。

 しかし夏野氏は「自分の緯度,経度を知りたい人はいない」とgpsOneのような高精度サービスを一刀の元に切り捨てる。

知りたい位置情報の精度は,場所に依存する

 現在PHSや携帯電話は,どの基地局(用語)からの電波が強いかなどの情報から現在位置を取得している。1つの基地局がカバーする範囲は,都心部か郊外かなどでも異なるので,その精度はまちまちだ。PHSの位置情報精度が高いのは,1つの基地局がカバーする範囲が携帯電話に比べて非常に狭いからである。

 この仕組みはiエリアであっても特に違いはない。iエリアで違っているのは,位置情報とコンテンツの関係に対する考え方だと夏野氏は強調する。

 「(iエリアでは)エリアの設定を,緯度・経度や基地局ごとではなく,情報誌やグルメガイドのエリア分けを研究して,419のエリアに逆に基地局情報を割り付けた」(夏野氏)

 都心部だったら10分で歩ける範囲でどんなお店があるのか知りたいが,北海道の帯広だったら10キロメートル先でも同じエリアと考えていいだろうと,夏野氏は説明する。「一律に半径2キロには無理がある」(夏野氏)

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技術面でドコモは出遅れた?

 夏野氏はiエリアの簡単な使い方を説明し,こう語った。「皆さんもiモードを今お持ちでしたらぜひ試してください。あ,ここで一斉に試すとダメかもしれないですね……」

 案外,これは冗談ではないかもしれない。会場にいる2000人近くの受講者のうち,統計的には600人程度がiモードのユーザーだ。これだけの人数が一斉にアクセスしたら,電波状況がそれほど良くないこの会場では接続はかなり厳しそうだ。

 「基地局からデータを降らせるなんて……」と夏野氏はJ-フォンの「ステーション」サービスを揶揄するが,ステーションでは実はこうした問題は起こらない。iエリアが位置情報を利用したWebコンテンツなのに対して,ステーションでは端末からのリクエストなしにエリア内の端末すべてに情報を配信するものだからだ。

 KDDIが現在提供している位置情報サービスにしても,その仕組みはiエリアとほぼ同等。夏野氏は“緯度・経度まで知りたくはない”というが,そこまで分かることで初めて実現するサービスもある。

 例えば携帯電話に比べて位置情報の精度の高いPHSでは,電車の乗り換え案内を行うコンテンツで位置情報を利用した場合,高い精度で最寄駅を導き出す。地図表示サービスにしても,ユーザーの位置がある程度の精度で分からなければ,カーナビゲーションのような道案内機能を携帯電話には搭載しにくい。

 確かにほかのキャリアの位置情報サービスに比べ,コンテンツへの誘導法,見せ方,内容などでは,iエリアの出来はいい。しかし,今後携帯電話のキラーアプリケーションとなるかもしれない“位置情報サービス”としては,iエリアは少々力不足かもしれない。

[斎藤健二,ITmedia]

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