News 2001年3月27日 11:48 PM 更新

電灯線インターネット業界,日本に熱い視線──CeBITレポート

国内では実用化が進まない低圧配電線を使ったアクセス回線だが,CeBITの展示でも1つのジャンルを形成するほどメジャーになっている。

 xDSLやFTTHと同様,海外で一般家庭向けのアクセスラインとして注目を集めている「PowerLine」──低圧配電線だが,国によってさまざまな事情を抱えているようだ。中でも日本は,市場拡大が見込める一方で規制が厳しく,業界関係者が市場動向を注視している。

 CeBITの中でも通信関連企業が多く集まるホール24では,多くの企業が低圧配電線アクセスのソリューションを展示している。例えば,PowerLine向け半導体のメーカーiNARIは,2Mbpsの帯域幅を実現するチップを紹介し,その試作モデムを使って300Kbpsのビデオストリーミングを流して見せていた。既に幾つかのOEMメーカーも決定しており,「米RCAは,来月にも出荷を開始する」(同社)という。また,「今年中には最大12Mbpsのソリューションも発表する予定」とのこと。


iNARIのデモ。PCの横にあるクリアボックスが試作機

 一方,Enikiaブースでは,20MbpsのインターネットアクセスとVoIP機能を提供する「HomePlug」アライアンスを紹介,対応チップの売り込みに忙しい。HomePlugは,コンパックやシスコ,3Comなど13社が参加する電灯線インターネットアクセスの業界団体であり,日本企業では松下も名を連ねている。


Enikiaブースでは,ネットワークゲームをデモンストレーション

 しかし,Enikiaの担当者は「日本は今のところ,われわれの市場フォーカスから外れている」という。ようやくADSLの対応地域が広がってきた日本は,これらの企業にとっても大きな市場になり得る。しかし,「利用できる周波数帯,つまりレギュレーションが異なる。HomePlugは,2〜15MHz帯にフォーカスしているが,ここは日本では使えない」(Enikia)。

 国内で電灯線インターネットアクセスの規格といえば,まず「エコーネット」が浮かぶが,同規格では450KHz以下の周波数帯を使うため,9600Kbps程度にしかスピードは上がらない。これに対して,米国ではFCC Part15のレギュレーションで2〜50MHz,欧州でもCISPER-22で0〜30MHzという広い周波数帯域を利用することができるようになっているという。今のところ,日本でこの周波数帯を使うと,短波放送やアマチュア無線に干渉する可能性が高い。

「米国では,4〜25MHzを家庭向けと位置付けているが,ここを使えば20Mbps以上のスループットが出る。日本でも来年にはレギュレーションが変わると聞いているが,早く対応してほしいものだ」(Enikia)。また,iNARIの担当者も「日本のレギュレーションが変わればビジネスチャンスが拡大する」と話している。

関連記事
▼ 電灯線インターネットの敵は冷蔵庫?
▼ 電源コンセントでネットに接続──家電ネットワーク「エコーネット」をCEATECで見た
▼ ウワサの「eHIIハウス」を見てきました
▼ 北海道電力,電力線を利用したネット接続の実証実験

関連リンク
▼ Enikia
▼ iNARI
▼ HomePlug(日本語)

[芹澤隆徳, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.