液晶ディスプレイBTO「MyStyle 112」のメニューと戦略を探る(3/3 ページ)

» 2006年06月08日 00時00分 公開
[林利明(リアクション),PR/ITmedia]
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最大ボリュームの17インチと19インチからスタート

 ここからは、MyStyle 112を始めたきっかけやコンセプト、今後の展開などを紹介していく。EIZOダイレクト販売担当の取締役執行役員でカスタマーリレーション推進部部長の鶴見栄二氏にお話を伺った。

 ──液晶ディスプレイのBTOシステムは、まったく新しい試みだ。一朝一夕で構築できるものではなく、入念な下準備を重ねてのリリースであったはずだ。いつ頃から構想していたのだろうか?

鶴見氏(以下、鶴見) 具体的にいつ頃からとお話できないくらい、かなり前から構想はありました。共通化デザインの企画・開発、セル生産方式の採用、自社直販サイトという販売体制、すべてが整ったことで、ようやくBTOの提供を実現できました。これは、開発から生産まで、国内で一貫して行っているからこそ、実現したシステムだと考えております。

ナナオ 取締役執行役員 EIZOダイレクト販売担当 カスタマーリレーション推進部部長 鶴見栄二氏

 構想自体は、海外のマーケットが出発点になっています。PC用の液晶ディスプレイはワールドワイドで販売していますが、かつては国ごとにニーズや仕様が違い、要望に合わせて製品を設計していました。当然のことながら、要望を聞いてからなので、製品化に時間がかかります。そこで、さまざまな要望に応えられるものを、あらかじめ用意しておこうと考えたわけです。また、液晶ディスプレイの標準化(編集部注:インタフェースや解像度など)が進んだことも1つの要因です。

 ──個人ユーザーの視点から見ると、液晶パネルの選択肢が少々もの足りなく感じる。最近はワイド液晶の人気が高まっており、表面処理が光沢の製品も勢いがある。こうしたバリエーションは考えなかったのだろうか。

鶴見 初めての試みということで、最大のボリュームゾーンである17インチと19インチからスタートしました。それでも、用途ごとにベストだと考えられるパネルをラインアップしています。

 20インチ以上になると、我々としても十分な製品バリエーションを持っておらず、“MyStyle”と言えるまではカバーできないだろうと考えました。ワイド液晶ならではの選択肢や機能などが提供できるようになれば、将来的には可能性もあります。

 光沢液晶については、社内でも議論になりました。EIZO製品では光沢モデルが少ないということもありますが、ノングレアモデルを選ぶお客様が圧倒的に多いのが現状です。ただ、個人のお客様はワイド液晶や光沢液晶に期待されていることも承知していますので、ベストな選択ができるようにラインアップしていきたいですね。

 ──確かに、現行のEIZO製品では、20インチ以上の液晶ディスプレイは4モデルしかない(編集部注:その後6月12日に20.1インチと21.3インチの2モデルを発表したので計6モデルとなった)。ワイド液晶は21.1インチの「FlexScan S2110W」と、24.1インチの「FlexScan S2410W」だけだ。液晶パネルの選択肢が1つのみなので、BTOメニューにするとしても、スピーカーとスタンド、本体カラーだけになってしまう。「ワイド液晶ならではの選択肢や機能」といった部分で、将来的にどのような提案がなされるのか、期待が大きいところだ。

 また、スピーカーの選択肢は「有無」だけだが、スピーカーありを選ぶと本体背面のスピーカー収納スペースに搭載されるのはユニークな発想だ。これはやはり、スリムベゼルを優先したデザインだったのか。

鶴見 その通りです。最近は企業のお客様からも個人のお客様からも、マルチディスプレイへの要望が非常に増えています。スリムベゼルは絶対に外せないというご意見も多数寄せられていまして、スリムベゼルは何としても守るべきところだと考えています。背面スピーカーのデザインは自信作です。

 スピーカーの音質については、ちゃんと聞こえればいいという意見がことのほか多いのです。以前、EIZOダイレクトでFlexScan S2110WやFlexScan S2410Wと、BOSE製スピーカーをセットにしたダイレクトパックをラインアップしたのですが、これが非常に好評でした。音質を求めるお客様には、こうしたかたちで提供することも検討しています。

BTOでもEIZOクオリティを訴求する

 ──もう1つ気になるのは、何といっても価格だ。液晶ディスプレイに限らず、他社の直販サイトでは、価格やキャンペーンを頻繁に変えるところがある。直販サイトのBTOは価格を調整しやすいシステムだが、購入者側の視点で見れば、やりすぎはマイナス効果だ。

鶴見 液晶パネルをはじめ、部材の調達コストは日々変動しますし、市場プライスとの兼ね合いもありますから、販売価格が変動する可能性は否定できません。しかし、頻繁に変更することはしません。

 ──EIZO液晶ディスプレイは、他社製品と比べて若干高価だ。EIZOダイレクトの価格も、相対的に見れば安いとはいえない。実際、市場のシェアは低価格な製品が圧倒的に高い。BTOの強みの1つ、低価格戦略は採らないのだろうか。

鶴見 価格重視のお客様は、EIZO製品を土俵に上げてくれません。逆に、品質や機能を重視されるお客様には評価を受けていますので、そうしたお客様に応えるためにも、今後もこの方針を継続していきます。品質や機能を重視するというのは、ナナオの企業風土でもあります。価格なのか、品質や機能なのか、お客様のほうでも線引きはできているのではないでしょうか。

 ──BTOシステムとはいえ、オーダーから到着までの納期が7営業日以内(土日を含めると実質的には9日間以内)というのは、いささか長く感じる。もう少し短縮されると嬉しいのだが。

鶴見 やはり初めての試みというのがその理由です。オーダーを受けてから、1台ずつ国内工場で生産しますので、スタート時点では7営業日を頂くことにしました。生産体制と流通体制の整備を推し進めて、納期は短縮したいと思っています。

 ──EIZOダイレクトでBTO製品を販売する目的とはどのようなものなのだろうか。

鶴見 BTOにはEIZOダイレクトが最適の販売チャンネルです。お客様と直接コミュニケーションできる点をもっとも重視しており、ニーズをすばやく反映した製品作りを進めます。今回、112通りのBTO液晶ディスプレイを自社のEIZOダイレクトサイトで発売することにより、サイズや色など、さらにバリエーションを求めるお客様のご要望をお聞きすることができるのではないか、と考えております。ニーズがあれば、BTOメニューの選択肢も随時増やすつもりです。

 PCのディスプレイは、ユーザーが接する時間が長いものです。服と同じように、本当に気に入ったものを長く使ってほしい。個人のお客様には、自分にぴったりな1台をMyStyle 112で楽しんで作っていただきたいと思います。ビジネスや教育現場のお客様には、ニーズとコストに見合った構成を提供できるでしょう。


 離陸したてのMyStyle 112だが、期待は大きい。少し触れたように、ワイド液晶や光沢液晶の選択肢が加われば、個人ユーザーにとって、より魅力的になるはずだ。設置場所などの問題で17インチや19インチを検討している人にとっては、従来より安価に、望む仕様のEIZO製品を入手できるようになっただけでも、注目に値するだろう。さっそく、自分なりの構成をいろいろと作ってみてはどうだろうか。

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年3月31日