「FMV=富士通=格好いい」を結び付ける――富士通デザインセンターの決意青山祐介のデザインなしでは語れない(3/3 ページ)

» 2007年06月14日 12時00分 公開
[青山祐介,ITmedia]
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配属わずか2カ月の新人デザイナーを起用した

 デザイナーのアイデアを表現するべく、同社でもまずは手書きからデザインを始める。ただ、その表現方法にはデザイナーによって個人差があるという。

石塚 黒澤はまだ新人なのできちんと色を付けていますが、ベテランになると色も付けないんですよ。自分の中で形が描けるレベルのデザイナーのスケッチであれば、我々判断する側も、スケッチから実際にどうなるということがわかるので、特に必要としていません。それよりも、アイデアを広げるほうに時間を回してくれたほうがいいのです。また、新人の場合はいろいろなカットを描かせて、アイデアを多角的に整理させるようにしています。

 新しいFMV-BIBLO MGシリーズのデザインを担当した黒澤氏は、現在入社2年めだ。つまり、昨春に富士通に新卒で入社して、配属後わずか2カ月でこのデザインを始めたという。「彼は比較的優秀でITに関するセンスもよく、デザインのツールを覚えるのも早かったですね」と石塚氏は黒澤氏を評する。とはいえ、まったくの新人1人に任せるわけにもいかないため、黒澤氏とディレクターである石塚氏の間にチーフが立って、新人を指導しながらデザインをまとめていく。

石塚 「このデザインにしたいなら、こんな構造でないと……」とか「このプリンタ板をもっとこっちに移して欲しい」といった技術的な部分が絡んでくると、やはりキャリアがないと設計側と交渉ができないんです。そういう部分を担いながら若手デザイナーのセンスを生かして製品につなげるのがチーフの役割だと思います。

黒澤氏が描いたラフスケッチ

 それにしても、入社わずか2年めの新人が伝統のあるMGシリーズのデザインを任されるというのは、黒澤氏にとってはかなりプレッシャーがあったのではないだろうか。

黒澤 本当に光栄でした。でも最初は「本当にまいったな」と思いましたよ(笑)。技術もないし設計の構造のこともわからないので、一から勉強しました。こういう形を作りたいと思っても、それが構造上絶対に不可能だったりもするわけです。設計とのやり取りによっては、それは実現できるのかもしれないけれど、その判断もできない。そういったことを先輩方に手取り足取り教えてもらいながら、なんとかここまでまとめてこられたという感じです。MGシリーズというモデルを担当でき、とてもいい機会に恵まれたと思ってます。

石塚 彼をMGシリーズのデザイン担当にして開発が進んでいく中で、私は設計の部長に呼ばれたことがありました。「MGシリーズはビジネスとしてとても重要な商品だ。担当デザイナーが新人で大丈夫か? お願いだからよく考えてくれ」とね。「大丈夫ですよ。チーフが手取り足取り面倒を見るから任せてくれ」と説得しました。黒澤がそれに応えてくれたからよかったのですが、やはり、新人というのは周りから見るとそのくらい不安なんです。本人もそうでしょうが、周りも同様なのです(笑)。

 このようにして生まれたMGシリーズは、薄くて軽く、カッチリとしたとても実用的なデザインにまとめられている。入社2年めというキャリアでここまでの仕事をやり遂げる黒澤氏のデザイナーとしての将来には、ぜひとも期待したいところだ。一方、この出来栄えはデザイナーとしての先輩である石塚氏にはどう映っているのだろうか。

石塚 商品のコンセプトをきちんと反映はできていると思います。そういう意味でインダストリアル・デザイナーとしては合格点ですね。ただし、もうちょっと強引さがあってもよかったかな、というところがあります。“ここを押せばもっとこういうのができるのに”というところがあったはずです。もちろん黒澤の上にはチーフもいましたが、デザイナーと設計の担当同士で交渉するというテクニックを黒澤が身に付ければ、もっとはじけたデザインができると思いますよ。今回はこれでいいのですが、次に向けてもっと進歩させるには、そこが彼に必要なことだと思います。

黒澤 全力を尽くせたとは思っていますが、やはりそれで満足してしまったらデザイナーというのはそこで終わりだと思っていますから、決して慢心することなく次のデザインをよりよいものとするべく、また全然違った形で表現していきたいと思っています。

「PCへの期待感」「これから」をデザインで表現したい

 最後に改めて、富士通のデザイナーとしてFMVシリーズにかける意気込みを聞いた。

石塚 “PCのある新しい生活を作りたい”というのが僕のベースにあります。そもそも富士通に入社するときにここを選んだ理由が、コンピュータという何かよくわからない世界で何ができるのだろうという探究心でした。コンピュータの世界が持っている、何か期待感のようなものをデザインしたかったのです。それが今、PCという形になって我々の生活の中に密着してきています。そしてこの先、どのように変わっていくのだろうという、読めないものもあります。だからこそ富士通のPCは、もっと“これから”を期待させるものとして、我々はそれを作っていかなければならないと思っています。

黒澤 FMVは富士通らしさがよく出ている商品だと思っています。富士通のイメージはFMVのイメージから作られているし、富士通のイメージがFMVのイメージを作っています。そういう会社のイメージとしても重要な商品、会社の顔ですね。だからこそ、良いとこは伸ばしていきたいし、まだ不十分な部分は補いながら、富士通というブランドを“富士通=FMV=格好いい”という形で結び付けられたらいいと思っています。

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