IT仕事塾

ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る
第7回 個人用として始めたデータベースが、輸入卸売り業務の基幹システムに成長した「ワッツ インターナショナル」(3/3)

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 例えば、印刷。印刷は、輸入小物を扱う業界においては多用せざるをえません。大半の取引先が、データではなく、紙に印刷された伝票や資料を必要とするからです。そのため、このシステムから利用するプリンタも、定型帳票を印刷するためのドットインパクトプリンタ、通常業務のモノクロレーザープリンタ、プリンタ/FAX兼用の多目的型プリンタ、製品写真まで印刷するときにはカラーレーザープリンタがあり、その中から用途に合わせて選択しなければなりません。

 同社のシステムで印刷するときは、ダイアログをクリックしくだけでよく、不必要な操作をユーザーにさせない、ウィザード形式で実行されます。具体的に見ていきましょう。


印刷にパスワードが必要であることを警告


予約・出荷明細か、在庫関連かをここで選択


倉庫在庫を検索するかどうかを決定


どの倉庫の在庫を調べるかどうかを決める


検索スピードを指定することもできる


検索を実行中


印刷するリストを、特価リストと在庫リストから選択


在庫リストの並び順を決める。LEDGER順にすると、商品が輸入されてきた順番で見ていくことができ、商品順にすると、商品別の状況がわかる


デフォルトの用紙設定を示したうえで、プリンタの設定を確認させる


ここで初めて印刷画面が出る

システム拝見

 ではここで、ワッツ インターナショナルの業務システムを具体的に見ていきます。まずは、メニューを開いたときの画面です。


クリックすると、画面全体を表示します

 これは、ログイン後の表示画面です。社員がこのシステムに入ると、それぞれに専用のログイン画面が表示されます。顧客の電話番号、商品チェック、在庫など、同社で扱う業務内容のほとんどすべてをこの画面からまかなうことが可能です。それだけではありません。拡大表示した画面(上の画面をクリックしてください)の下のほうに、「村田清隆さんへの伝言とMEMO」という欄がありますが、これの最初の1行目は、ほかの社員に伝言を送ると自動的に反映されるコーナーです。社員それぞれのための専用ログイン画面を用意することで、このようなことも可能になっているのです。

 このメインメニューから、商品IDで検索をすると、次の画面になります。


クリックすると、画面全体を表示します

 検索を選択すると、専用の画面が表示されます。画面の色が変わっているのに気付きましたか? 「初心者への対応で重要なのは、ユーザーが思っていないことは、やらせないようにすることです。例えば、検索画面と編集画面ははっきりわけて、色を変えておくとかしておかないと、ユーザーは検索をしているつもりでも、実際にはレコードの情報を書き換えていたりということもありますから」と村田部長は説明してくれました。

 ここで検索した結果は、次のように表示されます。


クリックすると、画面全体を表示します

 選択された商品が、次の画面に表示されます。


クリックすると、画面全体を表示します

 この画面の上部には、「警告!このカードはデータを入力・修正する画面です」と、注意を喚起するメッセージが表示されています。画面の左下には箱単位(大口受注)の受注履歴、右下にはそれ以外の受注履歴が一覧表示されています。

自分で開発した基幹システム、その効果は?

 ここまで作り込んであるシステムとなると、それなりの効果を期待するもの。具体的にはどのあたりで成果が上がっているのでしょうか。

 「まあ、昔には戻れないでしょうね」と村田部長。このシステムのおかげで具体的にどれだけ効果が上がったかというのとは別に、業界内の動きにうまく対応できたのは効果が大きかったようです。「例えば、以前は顧客に問屋が多く、注文も箱単位だったので、紙の処理でも対応できていたのですが、今は顧客構成も変わり注文の単位も細かくなっています。その分だけ、綿密な対応が必要で、昔のやり方だったら対応できていなかったでしょう」(村田氏)。

 現状にすばやく対応できたので、同社では不況の今でも売上が伸びているそうです。「今まで以上に付加価値を明確にアピールできています」と村田部長は自己評価します。

 現在では、この基幹システムをベースに、顧客や取引先に対してさらにきめ細かなサービスを提供しようとしています。例えば、商品部からの提案として、海外に発注する際、輸入先の担当者が現地の工場に説明するときにわかりやすいよう、資料を作成する機能がほしい、というものがあります。また、資料請求があったときに、現在では該当製品のJPEGファイルを印刷して送ったり、電子メールに添付して送ったりしているのですが、それをPDFで送ることができるようにしたいそうです。

 きめ細かい対応をすると、「資料を送っただけでも相手は感動してくれるんです。そういうものの積み重ねですよ」と村田部長。社内ユーザーのユーザビリティ、そして顧客や取引先への対応、この2つが、同社のファイルメーカーのシステム上にうまく組み込まれていることを実感しました。

 これが可能になった背景には、ファイルメーカーProが持つ、開発者にとっての見通しのよさがあると考えられます。と村田氏はこのソフトについて、次のような感想を述べています。「ファイルメーカーProは面白いソフトです。深いな、と思いました。これで、できるんじゃないか、ということが見えてきました。作っていくうちに、想像が確信に変わってきたんです。」

[松尾公也, ITmedia ]

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