高品質実現
東芝の目指す理想的ノートPCはこうして生まれる（3/4）

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“こだわり”が実現する快適性

　東芝のノートPC開発に対するこだわりは、もちろん他の部分でも徹底されている。例えばそれは、快適性といった形でユーザーメリットへとつながっているようだ。

　例えば、放熱設計。前回のレポートでも報告したように、放熱のシミュレーションや設計を外注しているPCベンダーが多い中、東芝は熱設計のシミュレーションを青梅事業所内部で行っている。このため、熱の問題に対する問題解決を素早く行える。

　また、同じ東芝グループ内に関連会社としてヒートシンク、モーターなどを開発する企業を抱えるため、完全な外注を行う場合に比べより詳細まで詰めた開発を共同で進めることができるわけだ。

3次元CADによる解析

映像の前半は、側面落下時のデータを入力した解析シミュレーション。後半は、内部の風流と温度の解析シミュレーションの様子。設計段階から、各種実験データを取り入れた念入りなシミュレーションを行っている

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　「熱設計と言えば、昔は勘やセンスといった目に見えないスキルに頼らざるを得ず、ノートPC設計のなかでも特に大変な分野だった。しかし、現在は青梅事業所内で完結した設計とシミュレーションの部門があるため、かなり熱処理精度の高いものが設計できるようになっている」

　そうした高精度のシミュレーションに基づく詳細な熱設計が可能な東芝・青梅事業所は、快適なノートPCを作るために努力を惜しまない。例えば軽量化や小型化を目的として安易にファンレス化するといったことは、行わない主義だ。

　冷却ファンのないファンレス設計は、静かで故障の少ないノートPCを作るための要件として認識されているところがあるが、快適なPCを作るためにこそ冷却ファンは重要な存在というのが東芝の見解だ。

　「表面から放出できる熱量は、筐体のサイズが決定した段階であらかじめ決まっているものです。これは物理現象ですから、安易に熱を筐体全体に拡散すると、お客様が触れる部分も表面温度が高くなります。発熱量の少ないモデルなら、もちろんファンレス設計しますが、しかし最近のノートPCから発生する熱の最大量は、ノートPCの筐体から自然に放熱できる量ではなくなっているんですよ。フル稼働でシステムを連続的に動かした時、安定して動作し、かつ筐体の温度が基準値以下になっていなければなりません」

　だから東芝は最も薄く、小さく、省電力なdynabook SS Sシリーズにも冷却ファンの搭載をやめない。実際の稼働時には動作頻度は低い冷却ファンだが、安全性や快適性を保つために搭載する。ファンレス化が軽量化や小型化、薄型化に寄与するとしてもだ。

　同じようなこだわりは、キーボードにもある。通常サイズのキーボードに関しては、以前から高い評価を得てきたが、近年は小型・薄型のキーボードでの快適性を求めて開発を行っているという。

キーボード打鍵試験

先端が人間の指に近い素材を用いて、打鍵耐久度を調べる試験

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キーボード圧力試験

ノートPCのキーボードでは、2ミリ程度のストロークしか確保することができない。その中で、より打ちやすいキーボードを作るため、押して戻るまでの、キーボードの反発力や反発速度を計測する

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　「例えば初期のPORTEGEシリーズでは、キーサイズそのものが小型化されましたが、キータッチはフルサイズのdynabookと同等になるようにこだわりました。現在のdynabook SSは19ミリフルピッチになっていますが、一方で薄型化に挑戦しています。薄い、つまりストロークが短い中で、底突き感が少なく、しかもフィーリングの良いキーボードを目指しました。フィーリングというと曖昧な感じですが、実際にキータイプして感触が悪いものは、数字の上でどんなにすばらしくてもダメです。現在のdynabook SSに採用されている薄型キーボードは、その点でかなりのレベルを達成できました」。

　実際、タイプしてみると薄型ながら底を突いた時の指に伝わるショックが小さく、しかもきちんとクリック感を感じる。かなり軽いキーのため、重めのキータッチに慣れていると最初は違和感を感じるものの、慣れてしまうと疲れにくい。担当者のこだわりの結果がそこにはある。

[本田雅一, ITmedia ]

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