> ニュース 2003年6月25日 09:49 PM 更新
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Power Mac G5とPower Mac G4はどう違う?――「最速」の秘密を探る(2/2)


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 Power PC 970はIBMのPower4サーバチップをベースにしている。G4と比較すると、970はパイプラインが長くなり、外部L3キャッシュ用のコネクタがなくなっている。970には64KバイトのオンチップL1命令キャッシュと32KバイトのオンチップL1データキャッシュが載っている。さらにECC(エラー訂正)メモリを使った512KバイトのオンチップL2キャッシュも搭載されている。

 G5はMotorolaのG4に使われているAltiVec命令ユニットに似たSIMD(Single Instruction Multiple Data)を搭載している。Microprocessor Reportのアナリストによれば、IBMのユニットはMotorolaのユニットと似ており、両方とも同じ命令セットを使っているという。AltiVecを活用したコードで書かれたアプリケーションならば、PowerPC 970でも同様のパフォーマンス向上を期待できるはずだ。AltiVecを使い、さらに64ビットネイティブ化されたアプリケーションはさらに性能が向上する。

 PowerPC 970を使うために、AppleはIBMと共同で新しいメモリコントローラを開発した。新しいPower Macでは400MHzの128ビットDDR RAMを使っている。970は64ビットデータパスの採用により、さらに多くのRAMを搭載することが可能になった。最新G4 Power Macでは最大で2GバイトのRAMが搭載できたが、970プロセッサを使ったPower Mac G5ではその4倍の8GバイトまでRAMを組み込むことができる。

 G5システムのメモリバンド幅はG4のときの2.7Gバイト/秒から、ローエンドG5モデルでも6.4Gバイト/秒、ハイエンドの2GHz G5では8Gバイト/秒へと、大きくアップしている。さらに、デュアルプロセッサのG5 Power Macはそれぞれのプロセッサが独立したチャンネルを持っており、バンド幅は合計で16Gバイト/秒に達する。

 G5 Power MacではFSBが高速化されたことにより、ローエンドでも800MHz(倍クロックの設定)、ハイエンドでは2個の1000MHz FSB(倍クロック)がデュアル2GHzシステムに搭載され、Apple G5では大容量L3キャッシュが不要になっている。プロセッサキャッシュは遅いメモリシステムでデータのウェイトにより起きるパフォーマンス損失を最小限に抑えるために使われる。新しいPower Macデザインではこのボトルネックが解消されているので、L3キャッシュを外すことが可能なのだ。

 グラスコウスキー氏によれば、近い将来、G5ユーザーにはさらにいい知らせがあるかもしれないと予測する。IBMは0.13ミクロン(130ナノメートル)製造プロセスから90ナノメートル製造プロセスに移行しつつあり、それだけで現在のG5のダイサイズを118平方ミリメートルから60平方ミリメートルに縮小することが可能となる。

 「118平方ミリメートルというのは、プロセッサとしては最適の大きさだ」とグラスコウスキー氏は説明する。「それより大きくなるとチップは高価になってしまい、小さすぎるとパフォーマンスが落ちる。90ナノメートルに移行することにより、IBMはオンチップのキャッシュをおそらく1Mバイトか2Mバイトにして、L3キャッシュを追加できる」と同氏。

 AppleはAMDをはじめとするトップクラスの半導体メーカーがマザーボードと他の周辺部品との通信用に開発した、専用の高速バス実装であるHyperTransportを採用している。ローエンドのPower Mac G5は33MHzの64ビットPCIスロットを3基搭載している。これはG4と同様だ。ミッドレンジモデルのPower Mac G5はフルサイズの133MHz 64ビットPCI-Xスロットを1基、フルサイズの100MHz 64ビットPCI-Xスロットを2基搭載している。2GHz Power Mac G5は3基とも133MHz 64ビットPCI-Xスロットが採用されている。

 「PCI-Xと8Gバイトのメモリは理論上のものではない」とグラコウスキー氏。「これはエンドユーザーのパフォーマンスに関わってくるのだ」と同氏。

 AGPスロットのバンド幅は以前のG4の4Xから8X Proにアップグレードされた。これにより、GeForceFX 5200やRadeon 9600 Proグラフィックカードのパフォーマンスをフルパワーで発揮できる。

 AppleがG5モデルで加えたもう一つのイノベーションは、Serial ATAである。G4モデルはパラレルATAで、64本のフラットリボンケーブルを使っていた。G5のSerial ATAは150Mバイト/秒のバンド幅を持ち、2台のデバイスを1つの共有チャンネルでホストするという構成から、2つの独立したチャンネルのそれぞれに1台のデバイスをホストさせるように変更されている。

 また、Serial ATAではケーブルとコネクタが小さくなり、ケース内の空気の流れが改善されるので、PCメーカーは歓迎している。AppleはG5をすべてアルミニウムのケースで再設計しエアフローを改善、同社によれば前G4よりも大幅に(30dBA)騒音を軽減したという。

 グラスコウスキー氏はG5ケースはオーバーデザインであると確信している。AppleはG5プロセッサとそれ以外のシステムの性能をすぐに引き上げる予定していると同氏は推測する。IBMが90ナノメートル製造プロセスにスムーズに移行できれば、ジョブズ氏が公約した3GHzは達成できるだろうと同氏は見ている。そして、このケースは設計変更なしで高いクロックに対応できる。

 G5では背面に、より多くのコネクタを用意し、いくつかのコネクタはアクセスしやすいように前面に配している。背面にあるのはPCI-Xスロット×3、ADCコネクタとDVIコネクタ。無線LANについては、すべてのG5がAirPort ExtremeとBluetoothにオプションで対応している。新しい筐体デザインではコネクタとアンテナは背面に置かれている。

 オーディオに関しては、G5はアナログ入出力を背面に、ヘッドフォンジャックを前面に用意している。G5では筐体の背面にデジタルオーディオ入出力端子もついている。背面にはさらに、USB 2.0コネクタ×2、FireWire 400コネクタ×1、FireWire 800コネクタ×1、モデムジャック、ギガビットEthernetポートも用意されている。FireWire 400とUSB 2.0のコネクタは前面にも一つずつ設けられている。

 G5の3モデルの価格は1.6GHzシングルG5、800MHz FSB、256MバイトRAM、80Gバイトドライブが1999ドル、1.8GHzシングルG5、900MHz FSB、512MバイトRAM、160Gバイトドライブが2399ドル、2.0GHzデュアルG5、1000MHz FSB、512MバイトRAM、160Gバイトドライブが2999ドル。すべてのモデルにApple SuperDrive、Apple Pro Mouse、Keyboard、DVI to VGAコネクタ、USB延長ケーブル、モデムケーブル、AirPortアンテナが付属する。



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[David Read, IDG Japan]

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