ニュース 2002年12月25日 09:23 PM 更新

年末企画
「IP電話」ゆく年くる年 〜ISPに聞く(2/2)


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 一般にIP電話サービスは、着信側が加入者電話を利用している場合、必ずどこかで公衆回線網と接続しなければならない。そのため、NTT東西地域会社に3分あたり4.5−4.78円の接続料を支払う必要がある。単純に考えれば、BB Phoneのように7.5円/3分の料金設定をしている事業者は、1回の通話につき3円弱しか収益を上げられない計算になるわけだ。これで初期投資や運用コストをカバーするだけの利益を上げることが可能なのだろうか。

 ソフトバンク広報部は、この問いに対し「(各事業は)単独でも収益性を重視する構造になっている」と答える。

 ただし、「Yahoo! BBは1つのインフラを元に提供される複合サービス。独自のIPネットワークを利用し、インターネット接続、IP電話サービス、公衆無線サービス、BBケーブルTVなど複数のサービスを総合的に提供することで、3700円という高いARPU(Average Revenue Per User)を実現している」。Yahoo! BB全体として投資を行っているため、事業全体で収益が見込めればそれで問題ないとの考え方を示した。


Yahoo! BBの収益構造を説明する、ソフトバンクの孫正義社長(11月13日の記事より)

 一方BIGLOBEは、この問いに対し「確かに、利ざやが少ないことは計算すれば誰にでも分かる」と話す。

 「ただし、赤字というわけでもない。(現在行っている試験サービスでは)フュージョン・コミュニケーションズと組んでいる限り、設備投資はほとんど必要ない。既に実績ある、完全なIPバックボーンがもともとあるわけで、BIGLOBEはそこに接続するだけ。コスト的には、一からIPネットワークを作るより有利だ」とした。

今後に向け、カギ握る050番号

 IP電話の今後の展開を予想する上で、1つのカギになりそうなのが、総務省が9月27日から申請を受け付けている050番号だ。IP電話端末に050番号を付与すれば、IP電話としての着信が可能になる。もっとも、実現にはNTT局側のソフトウェア書き換えが必要で、実現するまでにあと数カ月単位の時間が必要といわれている。

 Yahoo! BB(ビー・ビー・テクノロジー)も、総務省に対して050番号の申請している通信事業者の1つ。現在提供しているBB Phoneサービスでは、前述の通り市外局番から始まる“加入者電話番号”を利用するため、050番号は特に必要ない。申請を行うからには、新しいサービス強化策があると予想される。

 この点をソフトバンク広報部に確認したところ、「050番号を用いての具体的な展開を検討している。ただ、現状ではサービス内容、開始時期、価格など詳細については答えられない」との回答だった。

 So-netの早苗氏は、050番号を利用した今後の展開について、より具体的に話す。

 「050番号の真の意味は、“ロケーションフリー”であること。携帯電話の090番号などと同様、場所に依存せず端末側で着信することが可能になる。現在、PDAを想定して、ホットスポットでの展開も考えている」。

 So-netは同時に、「我々は、ただの電話屋になるつもりはない」とも話す。具体的な展開は明らかにできないとしながらも、ソニーの作るハードウェアと連動させた上で、モバイルIPフォンサービスを提供する可能性があると話してくれた。

 BIGLOBEもまた、050番号でIP電話サービスが発展すると考える。古関氏は「夏以降にIP電話での着信が可能になれば、さらにサービスが普及するきっかけとなる。BIGLOBEのブロードバンドユーザーのうち、半分以上はIP電話を利用する状況になるのではないか」と予想した。



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[杉浦正武, ITmedia]

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