連載 2003年1月17日 06:43 PM 更新

Streaming Now!〜流れをつかめ! 最終回
ストリーミングを救うか? ケータイ動画

いきなりだが、今回が最終回。これまで述べたことを振り返りながら、ストリーミングの弱点、今後の可能性などについて探っていきたい。カギはケータイ動画にあり?

 なんと最終回となってしまった。早いもので、この連載を始めて1年以上になる。当初は、編集部にも私にも、「ストリーミングについて今の段階で着手しておけばいずれはブレークして……」などという考えがあったと思う。しかし、残念ながら、そんなにいい話はなかったのである(笑)。

 いったい誰が何を見て「もうかる」と考え、それでいて、ユーザーはどうしてストリーミング(もしくは動画配信全般)に興味を示さなかったのか?

 恐ろしく単純化して説明すると、こういうことになる。映像配信の上流側は、「ストリーミング」というキーワードを聞いた時、単純に「すばらしい、低予算でテレビ放送ができてお金がとれる」と考えた。下流側は、「すばらしい。PCでテレビが見れる」と考えた。が、フタをあけてみると……。

 上流側:「誰だよ、簡単に配信とかって言ってたのは……。意外に面倒だし、金もかかるじゃねーかよー。ネットのトラブルもあるし……まいっちまったよ」

 下流側:「誰だよ、『PCでテレビ』とかってほざいてたのは……。こんなちっこい画面じゃ面白くねーよ。それに、何だよ有料コンテンツって? インターネットで金なんか払ってられっかよ、番組もつまんねーし。よく考えてみたら、PCでテレビ見なくても、テレビがあるからいいや」

 こんなところではないのだろうか? 昨年を振り返ると、ニュース性があった出来事といえば、RealNetworksが、Apple Computerが、Microsoftが、それぞれ何を出した、何をバージョンアップしたといったことばかりのような気がする。要するに、技術の話ばかりが前に進んでおり、「このコンテンツの存在がターニングポイントとなった!」などというコンテンツはいまだに現れていないのだ。

動画は不便なメディアである

 「なぜ、ストリーミングがイマイチか」をもう少し考えてみよう。動画というのは、見た目のインパクトはあるが、基本的にそれほど便利なものではない。情報をとる時に、テキストのように斜め読みできない、「時間軸を持ったメディア」である(バックナンバー参照)。(「時短ビデオ」のような仕組みが用意されていないかぎり)1時間ものの動画は、どんな天才であっても1時間かけて見なければならないものだ。

 一方で、インターネットというのは、多くの人にとって「サクっと情報を取ってくるためのツール」である。どんなに技術が進化しても、動画をわざわざ見るという作業には、「気合い」か「余裕」のいずれかが必要になるのだ。この時点で、すでに矛盾している。だから、動画ビジネスをネットに持ち込むのはなかなか難しいのだ。この点については、すでにビジネスに取り組んでいる方々も気付いているところだ(難しいと認識した上で取り組んでいる方々については、私はこれからもエールを送っていきたいと考えている)。

「ストリーミング」という用語ともお別れ?

 さまざまな方々がストリーミングに取り組んでいるが、業種によって見ている部分がまったく異なる点が興味深い。例えば放送業界などは、ネット配信を新たなビジネスのラインとしてとらえ、何ができるかについて試行錯誤している段階だ。また、ストリーミングがなんらかの広報の道具、社員教育の道具にならないものかと、頑張って調査している会社もある。

 いまだにストリーミングが広まることを前提として、最先端の技術にばかり気をとられている人も多い。一方、ストリーミングの「発信する」「コミュニケーションする」というポイントに着目している人たちもいる。特に携帯電話に関わっている人はそうだろう(バックナンバー参照)。 

 この「何をしたいか」という、目的の部分で、ストリーミングという言葉が示すものも多様化していく……今年はそんな年になりそうだ。PCだけでなく、STBや携帯電話も配信に利用されてくると、ますますストリーミングの多様性は増す。そうなった時に、全てを「ストリーミング」という1つの言葉で片付けるわけにはいかないのでないか。ひょっとすると、もう「ストリーミング」という言葉の賞味期限が迫っているのかもしれない。

動画端末の普及→発信者増→ビジネス確立?

 そんな中、私が今年期待しているのは、携帯電話での動画配信である。キャリア各社、デバイスメーカー各社とも、どんどんそっちの方向に行かざるを得ないという状況がある。動画機能付き携帯が、出回るだろう。

 この「カメラ付きハードウェアがある」という状況は非常に重要なことなのである。特にビデオのように「敷居が高い技術」を、すぐ使える環境を作ることが重要だ。そうすれば、みんながそこらで、さまざまな使い方で、動画コミュニケーションを始めるのではないだろうか。

 この流れがPCやSTBにも波及すれば、ハードウェアにビデオカメラがバンドルされ、みんなビデオでチャットできる環境となる。みんな、「テレビ電話が面白い!」ということになるかもしれない。そこまでいけば、さまざま様々なビジネスがまた生まれてくるだろう。おバカな使い方もできれば、福祉や教育に活用することもできるのだ。ふと気が付くと、「これって、昔、ストリーミング好きの人たちが大騒ぎしてたことだよなー」ということになる。

 こんなことを考えていたところ、来週からBroadbandチャンネルもリニューアルされ、“ユーザーが多様化するストリーミング技術をどう楽しむか”も追いかけるサイトになるとのこと。これからもこちらのサイトで、映像配信系のレポートを続けていきたい。



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[姉歯康, ITmedia]

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