iモード、AOLを抜き世界最大のISPにiモードが3500万契約に達し、世界最大のISPであるAOLの全世界のユーザー数に並んだ。ドコモの夏野氏は、これからの競争の相手はインターネットのメジャープレイヤーであると力説する
iモードの契約者数が3500万を突破し、世界最大のISPであるAOLと肩を並べた。NTTドコモのiモード企画部長である夏野剛氏は、WPC EXPO 2002のカンファレンスで「iモードはAOLを抜いて世界最大のISPになった」と宣言。今後のiモード戦略は“携帯電話”という枠にとどまるものではなく、インターネットにかかわるすべての企業とのバリューチェーン競争になるという構想を披露した。
これまで夏野氏は、通信キャリア主導で端末からネットワーク、コンテンツまでをつなげたバリューチェーンを築くことが重要だ、と主張し続けてきたわけだが(8月29日の記事参照)、今や世界中にこの発想が根付きつつあるという自信を深めつつある。 カンファレンスのパネルディスカッションで同席したMotolora中国法人の主席代表である王武小珍氏は「(携帯ビジネスの発展には)機器のサプライヤーだけでは足りない。単にデバイスを作るのではなく、すべての人々がバリューチェーンの中に入るようにしなくてはいけない」と述べた(10月17日の記事参照)。これに対し、夏野氏は「3年前には、メーカーの方が『エコシステムとバリューチューン』という言葉を言うようになると思わなかった……」と、感慨深げだ。 携帯インターネットで成り立つビジネスモデルが、やっと世界の共通認識になった。そしてAOLの契約者をiモードが抜いたことは、夏野氏にとって“世界を相手に戦える舞台に立てた”というスタートラインを意味する。 夏野氏は、「モバイルコマースという言葉はない。携帯を使ったEコマースがあるだけだ」と言う。ドコモなどが行った予測によると、2006年の段階でコマース市場における携帯電話の比率は26%。これは2002年の24%からさほど変わっていない。
「モバイルを特殊なものと見てはいけない」と夏野氏。あるのは、インターネット上での競争だけだというわけだ。今回の講演でも、“世界の携帯インターネットサービスの中で、iモードがダントツのトップ”であることは既に前提となっている。携帯業界の中での勝負──という発想は既にない。 夏野氏の目に映っているのは、バリューチェーン同士の競争。しかもインターネットのメジャープレイヤーとの戦いだ。
それでは、インターネット上のバリューチェーンで勝利するためには、どんな方法があるのだろうか。 1つには、コンテンツを傘下に置いてバリューチェーンを強化するという方法がある。約3年前、米AOLがTime Warnerと合併したのもその流れの1つと見ることができる(2001年1月の記事参照)。しかし「我々は絶対にコンテンツはやらない」と夏野氏は力説する。「通信キャリアがコンテンツに手を出しては、競争環境が育たない」「通信キャリアという企業文化はコンテンツに向いていない」──。これらは夏野氏の持論でもある。 もう1つ、コンテンツとISPとの間をつなぐ“コンテンツプラットフォーム”の部分を強化しよう、という発想もある(8月12日の記事参照)。ここが、バリューチェーン同士の激しい競争の舞台になると夏野氏が予測する部分だ。「コンテンツがよりよくユーザーに提供できるプラットフォームは何か?。我々はプラットフォーマーに徹しよう」(夏野氏)。 夏野氏は、この舞台でAOLやMicrosoftなどにバリューチェーン競争を挑もうとしている。 そんな中、iモードの武器とは何か? 夏野氏は「iモードの強みの1つは、“携帯”電話であること」と説明する。MicrosoftやAOLがインターネットで完結するバリューチェーンしか作り得ないのに対し、携帯電話ならばインターネットの外のリアルな世界をも自分のバリューチェーンに取り込める。 ドコモが自動販売機や銀行ATM、コンビニなどとiモードの連携を進めるのも、このバリューチェーン強化の一環だ(7月17日の記事参照)。
こう見てくると、iモードの今後の戦略を占うのはそう難しいことではなさそうだ。1つは先に挙げたリアルとの連携。もう1つは、インターネットプレイヤーとバリューチェーン競争を行うということ。つまり、ネットのメジャープレイヤーたちがやろうとしていることを、携帯電話ならではの方法で行うということだ。インターネットビジネスの未来を探れば、自然とiモードの将来も読めてくる。そんな時代に突入しつつある。
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