Mobile:NEWS 2003年6月23日 03:16 AM 更新

携帯動画の互換性を考える
「MPEG-4」の仕組みとは(2/2)


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プロファイルとレベルって?

 基本的には上記の3つが重要になる。ところが次に、「MPEG-4 Video対応同士なのに再生できない」ということがある。

 実はMPEG-4 Videoの中にもさまざまな段階、スペックが含まれている。これは「プロファイル」と呼ばれている。そして、画像サイズなどを規定した「レベル」というものが存在する。

 この「プロファイルやレベルをどこまでサポートしているのか」ということは、デバイスやソフトウェアによってかなり違ってくる。

 たとえば、「Simple Visual Profile」(SP)というものが一番基本的なスペック、といってもいいだろう。「MPEG-4ビデオをサポートしている」というものの中で、このSPをサポートしていないものは、まず存在しないだろう。その名の通り比較的簡単な圧縮方法で、CPU負荷も小さい。携帯端末でMPEG-4が使われる場合、ほとんどがSPサポートである。

 もう1つ、「Advanced Simple Profile」(ASP)というものも一般的になりつつある。これは後で追加されたプロファイルで、Simple Profileの上を狙ったものである。圧縮の技術としても少々複雑で、必然的に時間がかかる。Simple Profileの上位互換のようなもので、このASPを扱った有名な技術としてはDivXなどがある。

 さらには、本格的なスタジオでの使用を前提としたStudio Profileなど、Videoについてだけでも、10以上のプロファイルが存在している。

 そして最近になってMPEG-4 part 10として追加されたものが「MPEG-4 AVC/H.264」である。これはプロファイルではなく、「拡張規格」になる。AVCとはAdvanced Video Codingの略で、高品質なコーデックとして注目されている。H.264のことを「MPEG-4対抗」と考えている人がいるが、それは間違い。ITU-TとMPEGが組んで進めている企画で、つまるところ、H.264というものは、広い意味でのMPEG-4の中に存在しているのだ。

 やや難しい話に入ってしまったが、「MPEG-4 Videoにもいろいろある」と理解していただきたい。

インタラクティブを実現するBIFSの存在

 さて次の話題。MPEG-4 Systemをサポートしているもの同士で、サポートしているVideoとAudioのプロファイルが同じであれば、必ず互換性がありそうに思える。が、それもちょっと違う。MPEG-4 SystemにはBIFS(Binary Format for Scene description)という「シーン記述」の言語なんていうものがあり、1つのファイルの中でインタラクティブなことができてしまうのだ。iVast(6月20日の記事参照)やEnvivio(2002年11月26日の記事参照)がサポートしている技術だ。

 ところがQuickTimeなどは今のところ、ビデオ+音声の組み合わせしかサポートしていないため、こうしたインタラクティブなファイルは再生できないことになる。

 その上「MPEG-4のファイルフォーマットを使っているのに、ほかの動画圧縮技術を使ってる」というものも存在し得るのだ。

ISMAはエラい!

 結局のところMPEG-4の中で「この動画プロファイルとこの音声プロファイルを組み合わせて使うことにしましょう」という決まりがないのだ。唯一、それを規定した団体がISMA(Internet Streaming Media Alliance)という団体である。アップルコンピュータ、アイ・ビー・エム、フィリップス、サン・マイクロシステムズ、シスコ、カセナが中心となっている業界団体で、「さまざまな標準技術からいいものを取り出して、標準スペックを作り上げる」活動をしている。ISMA 1.0という規格はMPEG-4の技術を使ったもので、「このプロファイルとレベルを組み合わせて活用しましょう」ということがしっかりと決められている。そのスペックが意外に業界内では重宝されているのだ。「ISMA 1.0プロファイル0対応」といった記述がなされているもの同士では、まず問題は起きない。

3GPPにもプロファイルがある

 では、「FOMAで使われている3GPP形式はどこに位置するのか?」ということになるが、3GPPのファイル形式は、ズバリ「MPEG-4 System」である。しかしコーデックとして、MPEG-4 VisualではないH.263や、MPEG-4 AudioではないAMRが扱えるようになっているという点は少々面倒だ。さらに、QuickTimeが扱える3GPP規格には3種類の「プロファイル」(またしても!)が存在する。動画に関していえば、それぞれのプロファイルの中で、H.263とMPEG-4 VideoのSPの2種類を扱えるという幅の広さが、また泣かせてくれる。



次回は携帯動画を検証

 要するに「MPEG-4は非常に複雑」ということを理解していただけただろうか。しかし、「複雑だ」と済ませて放っておいてはいけない。標準規格として整備され、公開されているのがMPEGの素晴らしいところ。これをきちんと理解し、どうやってうまく活用するかを考えねばなるまい。

 次回は、何と何との間に互換性があり、どうやって互換性の問題を解決できるのかを検討してみたい。


終わりなきMPEG-4

 「MPEG-4」というと、1つの規格のように聞こえるが、本文で触れているように、多くの人が考えているようなシンプルな規格ではない。

 MPEG-4という規格は、当初は携帯電話やネットワーク通信をターゲットとして考えられたが、進行の過程でスタジオ編集レベルまで何でもかんでもできる規格となった。そして、MPEGという団体は、MPEG-4を「最後のメディア規格」と考えている。MPEG-7はメディアの記述方法を定めた規格で(用語参照)、MPEG-21(2月14日の記事参照)はフレームワークを定めた規格である。

 いうまでもなく、技術は常に進化している。そこで新しいものが登場すれば、それを標準に取り込まなければならない。すると、「最後のメディア規格」であるMPEG-4が拡張されなければならない。

 そのためMPEG-4の中にも、MPEG-4バージョン2というものがあったり、パート10というものがあり、今も進化を続けている。これはどう考えても1つの規格ではないのだ。ひょっとして、今後もさまざまなプロファイルが追加されていくのかもしれない。そうなった時、「MPEG-4対応」という言葉の持つ意味はどれだけのものになるのか……。なかなか難しい問題だ。



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[姉歯 康, ITmedia]

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