Brand New PC Style:タブレットPCは電子カルテをどう変える?〜国立循環器病センター 中沢一雄氏に聞く〜

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 また、ペン入力一辺倒ではなく、病名などのような煩雑なものは、プルダウンで選択入力が可能な形式をとっている。処方の指定は過去の処方内容をドラッグコピーしたり処方期間を指定しすることもできる。

 このように一覧性と検索性という、これまでデジタルにはできて紙にはできなかったこと、紙にはできてデジタルにはできなかったことをうまく統合したようなインタフェースに仕上がりつつあるようだ。

NECソリューションズ 第二公共システム開発事業部 主任 岡田靖士氏(右)

チバ  徹底して紙での使い方を意識していて、さらに紙にはできないことをに挑戦しているのですね。

中沢  僕の電子カルテのイメージは、単純な診療の記録ではなく、医師の診療思考の場(プラットフォーム)を作るということ。さらに、患者さんに説明するためのコミュニケーションツールとして機能するものを、今一歩踏み込んでやりたいと思っています。患者さんも含めた広い意味での診療支援をするいう考えです。医師のアイデンティティは(電子カルテへの入力ではなくて)患者さんを診て直すということにありますから、これを妨げないように入力負荷をなくして、まずは現状手書きでやっていることをイメージどおりに支援してあげることが重要だと考えています。

タブレットPCが世に出てきたことが大いに追い風になっているようだ

チバ  ところでNECさんの電子カルテシステムは全面的に手書き入力になるのでしょうか?

中沢  いいえ、今回、NECさんのパッケージには手書きを中心としたインタフェースにして欲しいとは思いますが、実質的にはオプションということになるでしょうね。しかし、今回、タブレットPCが世に出てきたことは、手書き入力にとって大いに追い風になっているようです。

チバ  なるほど。具体的にはどういうことで感じますか?

中沢  手書き入力に無関心だった医療情報の関係者が色めき立ってきているように感じますね。仕様書レベルでタブレットPCに対応、ということを謳うようになってきました。現状でも、すでにタブレットを導入しているところをけっこう見かけます。ところが、これがタブレットを入力機器として十分に使いこなせていないことがほとんどです。手書き入力に関しては、これからという印象を受けますね。

チバ  中沢先生のお考えになる電子カルテはどういう形に進化するのでしょう?

中沢  厚生労働省は電子カルテシステムの導入にきわめて積極的です。しかし、これを進めるには技術開発をしなければなりません。確かに電子カルテシステムは以前より格段とよくなっているのですが、まだまだ不十分だと思います。医師の思考過程をしっかりとサポートし、患者への説明にも使え、ラフな入力からキチッとしたデータベースに落とす技術がいると思います。それがこれからの要素技術になるでしょう。

 今まさに進めているわけですが、入力がいい加減でもコンピュータが解釈して、データベースに自然な形で落とすことができる、そういう方向性でがんばっています。

チバ  完成した暁にはぜひ、拝見したいと思います。今日はありがとうございました。


 一般ビジネス向けと見られがちなタブレットPCだが、ペン・コンピューティングという観点から見ると、さまざまな応用が可能であることが容易に想像できる。

 今回の電子カルテシステムもそのひとつであり、中沢氏の取り組みが非常に現実的な活用方法であることがよく理解できた。ほんの数年先には、診療する医師のデスクや検温にくる看護婦の手元にはタブレットPCがあることとなるだろう。

[チバヒデトシ, ITmedia ]

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