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最新シネマ特集〜愛と死の間で〜

愛する人とのかけがえのない時間を取り戻そう

愛する人はそばにいて、電話でも話せるし、待ち合わせもできる。「ごめん、仕事だ」とキャンセルした食事も、翌日に持ち越せる。それが、コウにとっては当たり前だった。妻・チーチンを事故で失うまでは。

当たり前だったことが当たり前ではなくなった時、男の世界は全て終わってしまった。そう思っていた。それまでの自分を束縛していた医師の仕事を辞め、救急救護隊員になったコウ。しかし、妻を見送った後にした「サイン」により、彼女の心だけがこの世に残っていたのだ。しかし、移植から6年が経ち、心臓の持ち主ユンサムは末期癌で残りわずかの命しかない。病身の自分といると夫をだめにすると一人で最期を迎えようとするユンサムを、コウは「今度はそばにいる」とそばで見守ることを決意をする。

2005年秋にヒットした韓国映画『私の頭の中の消しゴム』では、作り上げた夫婦の絆を妻が病気により徐々に失っていくものだった。『私の頭の〜』が手の中から零れ落ちていく絆を引きとめようとする姿を描いたのに対して、この作品ではすべて落ちてしまい、取り返しがつかないはずなのに、あるきっかけから別のところに移ってしまった絆を見つけてしまうのだ。

仕事が忙しい、とつい大切な人に言ってしまっていないだろうか? どんなに忙しくても、この映画を見たあとでは時間を作らずにいられないだろう。

アジアのハリウッドを自認していた香港映画界だが、韓国映画に押されて公開本数も減っている昨今。アクションでもなく、ウォン・カーウァイ監督作品でもない新しい才能が芽生えを感じる1本だ。

愛と死の間で

2005年/香港/102分
出演:アンディ・ラウ 『インファナル・アフェア』 『LOVERS』
   チャーリー・ヤン 『セブンソード』
   シャーリン・チョイ 『ツインズ・エフェクト』
   アンソニー・ウォン 『インファナル・アフェア』
   アンバー・シュー
監督:ダニエル・ユー
8月12日、<シャンテ シネ>他にてロードショー
http://www.ai-to-shi.com/

筆者プロフィール
北本祐子
+Dstyle編集担当。
雑誌編集畑から異動によりインターネットの世界にデビュー。
映画は本数よりも、好きな作品を何度も見る派。それでも、年間鑑賞作品数はDVDを入れると200本ぐらい。3度の飯もお酒も好きだけど、甘いものがもっと好き。会社の近くのパティスリー・サダハル・アオキのスイーツを食べ尽くすのが目下の目標。




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